物欲は爆発だ

アラサー独身男が徒然なるままに書き殴ります。

【読書メモ vol.2】「人間ではないもの」とは誰か(青土社)

2022年12月に青土社から刊行された人文書であり、著者の博士論文および雑誌等に寄稿した論文を加筆・修正したもの。正直タイトル買いしたことは否めない。

テーマは1920年代以降に発生した、人間の主体性の感覚の喪失および変遷について、当時の詩に表れる動物や機械といった「人間ではないもの」に着目し論じるというもの。「人間ではないもの」が表象するものは詩人によって三者三様であり、バタイユ『至高性』で論じられている「自らの内なる至高性を投影させるもの」であったり、「自らを縛る社会規範から逸脱して主体性を構築するもの」であったりする。

計6人の詩人を取り上げていたが、中でも高村光太郎を取り上げた第2章2部が個人的に出色だった。彼の詩は『ぼろぼろな駝鳥』を始めとして反骨心が滲み出ているものが多かったが、なるほど彼が黄色人種として、また芸術家として自他の相克に苦悶し続けたことを見ると頷けるものもある。一方で、動物を理想像としつつも、自己を完全に一体化させることはせずに、自他の差異をそのままに、両者を融和的に包摂するものとして描いている詩もあったことは興味深い。

読書メモの量が膨大になってしまったが、これを要約するのも面倒なので、Google Driveにアップロードしてみる。青土社は内容も然ることながら、1ページ辺りの文字数が多く、物理的にも骨太な本が多い印象を持つが、本著は序章で定義されている「主体」に沿って分析が展開されるので、置いてけぼりにされずに読めると思う。

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